ズミクロン35mmは1958年の誕生し、レンズ構成の変化とともに世代を語られることが多いモデルとなっています。
ズミクロン35mmが誕生から現代までにどのような変化、進化を遂げてきたのかその特徴とともに歴史を解説していきます。

ズミクロン35mm 1st 8枚玉時代(1958年〜1969年）

ズミクロン35mmの歴史は1958年に8枚6群のクラシカルな設計でスタートしました。
Lマウント、Mマウント、LM兼用が作られた通称8枚玉と呼称されるこのレンズは1969年まで製造され、高い描写力とF2開放の明るさ、8枚6群のレンズ構成ならではの質感で、現在でも非常に人気の高いモデルとなっています。
その完成度、オールドレンズとしての人気ぶりは「伝説のレンズ」とも評されるほどです。
描写は階調が豊かで立体感の出やすい“往年のライカらしさ”が魅力です。
後にドイツで製造されるようになりましたが、当初はカナダで製造されており、ドイツ製の方が希少なモデルになっています。

8枚玉はメガネ無しの方がメガネ付きより相場が高く、メガネを取り外しピントが合わない改造されたレンズが出回っているため注意が必要です。
0.7ｍ表記でも眼鏡付きは生産されていましたので外装だけで判断は難しくなります。

ズミクロン35mm 2nd 6枚玉時代（1969–1979）

1969年に誕生したズミクロン35mm通称6枚玉は、8枚6群から6枚4群へ刷新されました。
初期はカナダ製で絞りのリングを操作する「ツノ」が設けられており、後期はドイツ製で初期に設けられていた突起がなくなっています。
初期のツノありモデルを第二世代、後期のツノなしモデルを第三世代とする場合もあり、初期のツノありは1969年〜1971年に製造、後期のツノなしモデルは1971年〜1979年に製造されています。
当時のライカは経営難の状況にあり、この6枚玉ズミクロン35mmはコスト削減を図ったとの見方もありますが、非常に高性能で質の高いレンズに仕上がっています。
鏡胴が簡素になりましたが、コンパクトかつ軽量で使い勝手の良さとも言えます。

ズミクロン35mm 3rd 7枚玉時代（1979–1996）

1979年には設計が7枚5群となり、小型・軽量化がはかられました。
ボケ感や現代的なシャープな描写に定評があります。
この頃ズミクロン50mmは第三世代が製造されたタイミングであり、経営難から脱したライカからニュージェネレーションと言われるレンズが製造されていった時代と重なります。
7枚玉には前期と後期があり、1969年〜1986年までが前期、86年以降を後期とする見方があります。
前期はレンズ前面の刻印が「LEITZ LENS MADE IN CANADA SUMMICRON-M 1:2/35」となっており、ライツという表記とメイドインカナダという表記が特徴となっています。
後期は「LEICA SUMMICRON-M 1:2/35」とライカ表記になっています。
この7枚玉の後、非球面レンズに切り替わっていくため、球面レンズの完成形として中古市場で今なお人気の高い世代といえます。

7枚玉は1979年〜96年と長い期間製造されたレンズですが、その中でもシルバーはブラックと比較して希少性が高く、市場への出回りが少ないモデルとなっています。このように7枚玉シルバーはレアでコレクション性が高いため高値で取引されています。

ズミクロン35mm 4th ASPH初代 (1997~2015)

通称7枚玉と呼ばれるズミクロン35mmの次に発表されたのが、初のASPH(非球面設計)を採用したズミクロン35mm ASPHです。
7枚5群のレンズ構成はそのまま、レンズ表面を非球面にすることによりレンズで発生する収差を補正しつつ、高いコントラストによる描写力に定評があります。
絞り羽根は8枚になります。

ズミクロン35mm 5th ASPH改良版（2016–現在）

2016年にはズミクロン35mmASPHの改良版である11673(ブラック)、11674(シルバー)が発売されました。レンズ構成は初代ASPHモデルを踏襲しつつ、絞り羽根を11枚に変更。
絞り込んだ際の形状がより円形に近くなりました。
解像度やコントラスト、ボケ感などの描写が高いレベルで融合したズミクロン35mmの到達点とも言えるレンズに仕上がっています。

APO-Summicron ASPH （2021–現在）

アポクロマート補正、複数ASPH、光学の設計にはフローティングを採用した10枚5群の別系統であるアポズミクロン ASPH(11699)は2021年に発表されました。
最短撮影距離が0.3mで、これまでのズミクロン35mmで弱点だった0.7m以内の撮影を可能にしています。
アポズミクロンMシリーズでは90mm、75mm、50mmに続く4本目で、高い解像度、描写力、性能を持ち合わせたライカ技術の結集と言えます。