ズミクロン50mmは、1953年の誕生以降、光学設計・鏡筒構造・最短撮影距離の見直しを重ねてきました。さらに詳しくズミクロン50mmの歴史を世代の変遷とともに解説していきます。

ズミクロン(Sumicron)50mm誕生まで

ライカのズミクロン50mmは、ズマール（Summar）とズミタール（Summitar）という二つの系譜を経て、戦後の光学技術の進歩を背景に1953年の初代ズミクロンへと到達しました。

1933年に発売された4群6枚ダブルガウス型レンズのズマール(Summar)は、当初固定式、後に沈胴式となりその後のズミクロンの原型を築きました。さらにズマールの改良型として1939年、ズミタールが登場。レンズ構成は4群7枚、沈胴式でズミクロンの前身として知られているレンズです。

そして戦後に利用可能となったレンズコーティングと、ランタンガラスによってズミタールの設計思想を発展させた初代ズミクロンが誕生しました。ズミタールとの大きな違いはレンズの1群と2群目を貼り合せず空気の層を作る通称“空気レンズ”を世界で初めて採用することで開放時のコマ収差を改善し、当時では非常に解像度が高いレンズとして地位を築きました。

ズミクロン(Sumicron)50mm 第一世代

1953年に発表された初代ズミクロンは当初Lマウント(L39スクリューマウント)として生産されましたが、ライカM3の発表とともにMマウント化され、Mシリーズの人気とともに市場で広く受け入れられていくことになります。

第一世代ズミクロンの中でも初期は沈胴式で携帯性に優れ、最短焦点距離は1m、レンズ構成は6群7枚で高性能・高解像度で評判を集めました。この初期ズミクロン（沈胴）はほとんどがLマウントで生産されましたが、一定数のMマウントが存在します。

第一世代ズミクロンは1956年、沈胴から操作性の高い固定鏡筒に進化しました。最短焦点距離1m、レンズ構成6群7枚の仕様はそのまま鏡筒が固定(リジット)となり、同年には近接撮影ができる特別仕様のDR ズミクロンも登場しました。DRとはDual Rangeの略で、専用ゴーグル装着時におよそ48cm~90cmの近接撮影を可能にし、市場で独自の評価を得ました。

ズミクロン(Sumicron)50mm 第二世代

1969年には大きく設計が刷新された第二世代ズミクロンが登場しました。ドイツからカナダへ生産国が変わりレンズ構成は5群6枚、最短焦点距離は0.7mになり実用面で自由度が向上しました。鏡筒も一新され、以降の現代的なズミクロン像に近づいた転換点とも言えます。

ズミクロン(Sumicron)50mm 第三世代

1979年、ズミクロンはさらなるモデルチェンジを遂げます。小型軽量化を実現し、焦点距離は0.7mのままレンズ構成は4群6枚に改められました。そして第三世代最大の特徴はフォーカスノブによる操作性です。ピントリングに指かけノブが付いており、直感的な操作性を実現。第三世代はライカニュージェネレーションと呼称されました。

ズミクロン(Sumicron)50mm 第四世代

ズミクロン第四世代は1994年に登場、レンズ仕様は第三世代を継承（4群6枚）しつつ鏡筒が刷新され、実用域のコントラスト・逆光耐性などで安定した評価を獲得しました。これまでのズミクロンはレンズフードを別途装着する必要がありましたが、この第四世代ではフード組み込み式となりました。

アポズミクロン(APO-Sumicron)50mm

2012年に登場したアポクロマート設計、フローティングフォーカス機構、非球面レンズでレンズ構成は5群8枚を採用したアポズミクロンはズミクロンの名を冠しつつ、ライカの技術力を結集したハイエンド版とも言うことができます。現行でアポズミクロンとズミクロンは併売されていることからもこのような位置付けだと考えることができます。歪曲収差や色収差を徹底抑制したこのモデルは中古市場でも最も人気なライカレンズの一つです。

70年以上続くライカズミクロン50mmレンズの歴史、それぞれの世代に個性的な特徴と技術の革新がありその魅力は掘れば掘るほど増していきます。中古市場で圧倒的な人気を誇る理由、当店で高額買取が実現できる理由がお分かりいただけたかと思います。手放すことを検討している、ズミクロンにレンズを買い換えたいという方はぜひ当店までご相談ください。